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川向正人教授より

皆様にごあいさつ

1950 年 香川県生まれ

1974 年 東京大学建築学科卒業、同大学大学院進学

1977 ~ 79 年 オーストリア政府給費生としてウィーン大学美術史研究所・ウィーン工科大学留学

1981 年 東京大学大学院博士課程満期退学

「19 世紀歴史主義の建築史的研究」で工学博士学位 取得

1981 年 明治大学工学部助手

1988 年 東北工業大学助教授

1993 年 東京理科大学理工学部助教授

2000 年 コロンビア大学客員教授

2002 年 東京理科大学理工学部教授

2005 年 東京理科大学・小布施町まちづくり研究所長兼務

 ほんとうに、あっという間でした。1993 年4 月に理工学部建築学科に赴任してから、2016 年3 月に定年を迎えるまで、23 年の歳月が過ぎました。

この記念冊子は毎年、卒業式・修了式の場で配られるはずですが、会場にいる学生のみなさんが生まれ、いろいろなことを習得して、社会人となって独り立ちしていくのと、ほぼ同じ歳月を教員として野田のキャンパスで過ごしたと思うと、実に感慨深いものがあります。教えたというよりも、私が学生、教職員の同僚、OB やOG のみなさんから学んだものの方が多いと思います。ありがとうございました。

 

 殊に1990 年代初頭には、いわゆるバブル経済がはじけ、景気の低迷期が始まりました。私自身、この23 年間に何度、「就職氷河期」「就職超ちょう氷河期」という言葉を聞いたことでしょう。教える学生も自分も、知恵を絞りスキルを身に付け、さらに磨きをかけなければ生き残れない時代の真っただ中で生きていることに気付いて、何度、慄りつぜん然としたことか。

 

 では、浮き沈みの激しい時代で、この前まで景気の良かった連中が全員、社会の表舞台から消えてしまったかというと、実は、そうでもない。良い施主、良いスタッフや友だちに恵まれ、コンペにも勝ちながら、タフに生き抜いている人々も、建築界には大勢います。社会がバブル経済にうかれていても不況続きで意気消沈していても、彼らは、世の中のファンダメンタルにちゃんと重心を置き、批判精神を忘れずに、できること、やらねばならないことを正確に捉えて、いい仕事をしています。建築(家)は、古代ギリシャのテクトン(大工、構築者)の時代から、世界の秩序付けとか世界の建設にかかわるものとして誠実で、むしろ真っ正直であり続けてきたと、私は思っています。建築はすごく泥臭い世界でもありますが、思考が明晰で、精神が純粋でないと、やっていけない世界ではないでしょうか。

 

 私は近現代建築史の研究者ですので、安藤忠雄さん、伊東豊雄さんの世代から、西沢立衛さん、藤本壮介さん、平田晃久さんの世代まで多くの現代建築家たちと交流があって、この交流を大切にしながら、長野県小布施町に「東京理科

大学・小布施町まちづくり研究所」という全国で初めての学生が常駐する研究所を創設して、まちづくりにも取り組んできました。現代建築の最先端の思考をまちづくりに持ち込み、協働・ワークショップの手法を使って、住民・行政・学生たちに、建築とまちづくりの醍醐味を味わってもらいました。2005 年から10 年間その活動を続けて、私が大学を定年退職する2016 年からは、まちづくり研究所は徐々に、国内外の大学・研究機関に開かれた場に変わっていきます。志ある者の誰に対しても開かれた場となりますので、どうぞ、ご遠慮なくお訪ね下さい。

© 2016 by 川向正人教授の退任記念講義に集う会 事務局

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